第6回京都大学附置研究所・センターシンポジウム
「京都からの提言-21世紀の日本を考える」
長谷川 真人 (京都大学数理解析研究所 教授)
もつれたソフトウェアを解きほぐす数学
コンピュータソフトウェアは現代社会の縁の下の力持ちです。ソフトウェア の力を借りない日はほとんどないと言っても過言ではありません。私はコンピュー タなんて触らないよ、という方でも、実は、携帯電話、自動車、家電、などな ど、目に見えないところで知らず知らずソフトウェアの恩恵を受けているはず です。もちろん、企業や役所、公共交通機関などでは、より目につくかたちで ソフトウェアが活躍しています。
それらのソフトウェアには数百万行に及ぶ巨大なものも珍しくありません。 そして、その中のほんの小さな不具合が、社会に致命的な影響を与えたという 事例は山のようにあります。入り組んだ巨大なソフトウェアを上手に設計し、 解析・検証し、さらに改良するためには、どのようにしたらよいのでしょうか? この講演では、数学を武器にしてソフトウェアに立ち向かう研究の、最近の動 向についてご紹介します。特に、ソフトウェアを数学的に正確に捉えることと、 現代数学が得意とする抽象化の考え方を用いてソフトウェアの本質に迫ること に重点をおいて、数学がコンピュータソフトウェアの研究開発において果たす 役割についてお話ししたいと思います。