第12回京都大学附置研究所・センターシンポジウムは、終了いたしました。
プログラム
- 開催日: 2017年3月11日 土曜日
- 時間: 10:00-17:10
- 場所: 石川県文教会館
(金沢市尾山町10番5号:金沢駅よりバス10分。
南町下車、徒歩2分) アクセス - 対象: どなたでも参加いただけます。 高校生の参加歓迎! ※入場無料
- 募集定員: 590名(応募申込みは先着順)
10:00-10:10 | 開会挨拶 |
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Ⅰ 生きる場の風景 [ 詳細] | |
10:10-10:40 | 人と自然のつながりを考える「人はなぜ、森で感動するのか」伊勢 武史 (フィールド科学教育研究センター准教授) |
10:40-11:10 | 人と自然のつながりを考える「森林の『メタボ化』を診断する」木庭 啓介 (生態学研究センター教授) |
11:10-11:40 | 人と人のつながりを考える「地域研究で考えるリアルなアジア」中西 嘉宏 (東南アジア地域研究研究所准教授) |
11:40-13:05 | 休憩 |
13:05-13:20 | 質問回答コーナー |
Ⅱ 神は細部に宿り給う [ 詳細] | |
13:20-13:50 | 体の仕組みに迫る「ウイルス化石が語る生命の進化」朝長 啓造 (ウイルス・再生医科学研究所教授) |
13:50-14:20 | 心の動きをたどる「芸術とはどんな〈出来事〉なのか?」吉岡 洋 (こころの未来研究センター教授) |
Ⅲ 天地玄黄、宇宙洪荒 [ 詳細] | |
14:20-14:50 | 地球の豊かさを知る「生命を支える海の微量元素」宗林 由樹 (化学研究所教授) |
14:50-15:20 | 宇宙の謎を解き明かす「ブラックホールだらけの宇宙」井岡 邦仁 (基礎物理学研究所教授) |
15:20-15:40 | 休憩 |
15:40-15:55 | 質問回答コーナー |
パネルディスカッション | |
15:55-17:05 | 「地上にもともと道はない」(魯迅)
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17:05-17:10 | 総括・挨拶 湊 長博 (京都大学理事) |
※ やむを得ない事情によりプログラムが変更になる場合があります。
3部構成「生きる場の風景」「神は細部に宿り給う」「天地玄黄、宇宙洪荒」について
私たちを取り巻く世界は、大きく3つに分けられます。
第一は、見る、聞く、触れることができる日常世界です。人はそこで自然と交わって生きるための糧(かて)を生み出し、お互いがつながる社会、そして国家を作り出しました。五官で感じられる等身大の世界です。
第二は、人の目に見えない世界です。物質構造や細胞動態など、生物の生存にとって不可欠であるミクロの世界は、まだまだ多くの謎に満ちています。さらに、人の「こころ」の不思議さも、私たちを魅了してやみません。
第三は、想像を絶する巨大な世界です。私たちが足を踏ん張って立つ地球や、仰ぎ見れば果てしなく広がり、今も膨張を続ける宇宙がそれにほかなりません。「遠くまで行くんだ」という限りない冒険心を養ってくれるマクロの世界です。
「生きる場の風景」(第1部)は等身大の世界を表しています。これは哲学者の花崎(はなざき)皋平(こうへい)さん(1931-)が1984年に出された単行本のタイトルです。花崎さんは「生きる場」という表現について、「生きる場」の「場」というところに、さまざまな意味を盛ることのできるふくらみがある、と述べています。今回の講演「人はなぜ、森で感動するのか」、「森林の『メタボ化』を診断する」、「地域研究で考えるリアルなアジア」から、生きる場の豊かな風景を感じ取ってください。
「神は細部に宿り給う」(第2部)はミクロの世界を表しています。ドイツの美術史家アヴィ・ヴァールブルク(1866-1929)が1925年に講義メモの中に残した言葉です。今日では「良質は細部に宿る」という意味合いで産業界にも浸透し、神学者や自然科学者が「摂理の普遍性を感動的に表現する」場合にも使われます。今回の講演「ウイルス化石が語る生命の進化」、「芸術とはどんな〈出来事〉なのか?」から、ミクロの世界に宿る神に思いを馳せていただければと思います。
「天(てん)地(ち)玄黄(げんこう)、宇宙(うちゅう)洪荒(こうこう)」(第3部)はマクロの世界を表しています。百済(くだら)の和邇(わに)(王仁)が『論語』とともに日本に伝えた識字教科書『千(せん)字(じ)文(もん)』の冒頭二句で、「天は玄(くろ)く地は黄色く、宇宙はとりとめもなく広大である」という意味になります。「宇」は上下四方の空間、「宙」は過去・現在・未来の時間をいいます。地球や宇宙に向き合う人の気持ちを最も素直に語っているので、今回の講演「生命を支える海の微量元素」、「ブラックホールだらけの宇宙」をまとめる言葉としました。
一貫して「自由(フリー)風格(スタイル)」で挑む京大の学問が、皆さんの知的興奮を誘(いざな)うことができれば幸いです。
講演者紹介
Ⅰ 生きる場の風景
人と自然のつながりを考える
人はなぜ、森で感動するのか
フィールド科学教育研究センター
准教授
巨木の圧倒的な存在感。木の葉をゆらすそよ風。小川のせせらぎ。人はたしかに、森で感動します。人はなぜ、森で感動するのか。これまでは、文学・美学・哲学といった人文科学の研究が主流だったこの疑問の答えを、生物進化や行動学といった生物学の観点から解き明かそうという挑戦的な研究を始めています。近年開発された、手軽に森に持ち出せる脳波計や眼電位センサなどの計測機器を用いた研究についても紹介します。
人と自然のつながりを考える
森林の『メタボ化』を診断する
生態学研究センター
教授
我々の生活に様々なサービスを提供してくれる森林では、樹木の成長(一次生産力)は窒素という養分の供給不足により制限されているはずでした。しかし人間活動の増大に伴い、森林に足りなかった窒素が大量に供給されるようになり、窒素を使い切れない、いわば「メタボ」な森林が増えてきていると報告されてきています。講演ではこの森林の「メタボ化」を、最新の安定同位体技術を使ってどのように診断するかについてお話しします。
人と人のつながりを考える
地域研究で考えるリアルなアジア
東南アジア地域研究研究所
准教授
冷戦が終わったばかりのころ、資本主義と民主主義がアジアにも広がっていくと多くの人たちが予想しました。それから約四半世紀がたち、私たちの目の前には当時の予想とはずいぶん違う現実が広がっています。この予想と現実の差を説明するには、地域固有の発展経路に着目する地域研究のアプローチが役に立ちます。この講演では、民主主義をひとつの切り口にしながら、東南アジア各国の最新の政治状況について検討したいと思います。
Ⅱ 神は細部に宿り給う
体の仕組みに迫る
ウイルス化石が語る生命の進化
ウイルス・再生医科学研究所
教授
地球上のすべての生物はウイルスに感染しています。生命の誕生と共に出現したウイルスは、生命進化には欠かせないパートナーだったと考えられています。最近の研究から、私たちのゲノムにはウイルスに由来する遺伝情報が数多く存在することが明らかになりました。私たちはなぜ自らの設計図に非生命体であるウイルスの情報を取り込んできたのでしょう。今回は、生命進化におけるウイルスの役割について考えてみたいと思います。
心の動きをたどる
芸術とはどんな〈出来事〉なのか?
こころの未来研究センター
教授
芸術は人に美を経験させ、癒しや心の豊かさを与えると言われます。しかし多くの現代芸術、とりわけ研究者や批評家が問題にするような作品は、普通の意味では美しくもなく、人を不安にさせたり不快や嫌悪の感清を起こさせるものも少なくありません。また芸術作品と言っても「モノ」ではなく、所有も保管もできないような「作品」もあります。いったい何が起こっているのでしょうか?実例を見ながら考えてみたいと思います。
Ⅲ 天地玄黄、宇宙洪荒
地球の豊かさを知る
生命を支える海の微量元素
化学研究所
教授
海の植物プランクトンは、生長に必要な元素を海水から取りこみ光合成を行い、生態系の基礎となります。鉄などの海水中微量元素の不足は、植物プランクトンの生長を制限します。一方、人類は鉛などの有毒な微量元素を環境に大量に排出しています。したがって、海の微量元素の分布を調べることは重要です。本講演では、海の生物と鉄の深い関係、および世界の海における微量元素の分布について、最新の話題をやさしくお話しします。
宇宙の謎を解き明かす
ブラックホールだらけの宇宙
基礎物理学研究所
教授
アインシュタインが一般相対性理論を提唱して100年目の2015年9月14日にノーベル賞級の大発見がありました。重力波が初めて直接検出されたのです。その波形から連星ブラックホールが合体したことも分かりました。また、ブラックホールからは光すら出て来られませんが、実はガンマ線バーストなど宇宙で最も激しい現象の多くはブラックホールと関係します。一緒にブラックホールだらけの宇宙の謎に迫りましょう。
パネルディスカッション
「地上にもともと道はない」(魯迅)
──未踏科学研究ユニットが目指すもの
山極 壽一
京都大学総長
大志万 直人
研究連携基盤長
佐々木 節
未来創成学国際研究ユニット長
基礎物理学研究所
湯本 貴和
ヒトと自然の連鎖生命科学研究ユニット長
霊長類研究所
梅澤 俊明
グローバル生存基盤展開ユニット長
生存圏研究所
原 正一郎
学知創生ユニット長
東南アジア地域研究研究所
司会:吉川 左紀子
こころの未来研究
センター長
アクセス
金沢駅より香林坊方面行きのバスをご利用ください。「南町」下車、徒歩2分。
お問い合わせ先
- 京都大学人文科学研究所総務掛
- 〒606-8501 京都市左京区吉田本町
- Tel: 075-753-6902 Fax: 075-753-6903
- E-mail: sympo2017*kurca.kyoto-u.ac.jp
(*を@に変えてください)