第117回 京都大学丸の内セミナー

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仏教文化の東伝を科学する

令和2年4月3日(金)18:00 から

 岡村秀典(人文科学研究所 教授)



 人文科学研究所の前身である東方文化研究所は、1938年から7年間にわたって中国山西省大同市の雲岡石窟を調査した。それは遊牧国家の北魏が460年ごろ造営した巨大な仏教寺院であり、ガラス乾板など1万枚以上の写真を撮影したほか、世界で初めて巨石仏の三次元計測を実施した。戦後、京都大学は仏教文化の源流を求めて1959~1967年にイラン・アフガニスタン・パキスタン学術調査隊、1970~1980年に中央アジア学術調査隊、1983~1989年に京都大学学術調査隊を組織し、ガンダーラ仏教寺院址の発掘調査をおこなった。なかでも2001年にバーミヤーン石窟の二大仏が破壊されたが、京大隊が記録したカラー写真や写真測量図は貴重な記録として世界的に注目されている。
 私はこれらの調査資料を整理・公開するとともに、仏教文化にともなって中国に伝わった金属器やガラス器の考古学・理化学的分析を進めている。中国では殷周時代に青銅器の鋳造技術が高度な発達をとげたが、5世紀以降、20%ほどのスズを含む高錫青銅器(サハリ)や亜鉛を含む黄銅(真鍮)器が西域から中国に伝来し、やがて正倉院宝物の仏具に展開していった。また、サーサーン・ガラスと同じ組成をもつガラス器が河北省定州市の北魏太和五年(481)舎利石函から出土していることを確かめた。今回の講義では、こうした日中共同で進めている理化学的分析の一端を紹介したい。



 【図1 雲岡石窟の調査】 

 【図2 バーミヤーン石窟】

 

 【図3 和泉市久保惣記念美術館所蔵サハリ杯】



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