第108回 京都大学丸の内セミナー





 南米小型サルが切り開く新たな研究

令和元年7月5日(金)18:00より

中村克樹(霊長類研究所 教授)







 サルとヒトを比べることで、私たちが「普通」だと考えていることが実は非常に珍しいことだと気付かされることがあります。みなさんは、父親がいて母親がいて子どもを産んで育てる家族の暮らしが普通だと思っていませんか。実は家族を単位として暮らすサルの仲間は非常に珍しいのです。例えば、チンパンジーやニホンザルは、適当な数のオスとメスが群れを作ってくらしています。オスとメスが交尾して子が生まれますが、どのオスが父親か分かりません。

 ヒトのように家族を単位として暮らすサルの仲間は、テナガザルやマーモセットの仲間くらいなのです。私が普段研究対象にしているマーモセットという南米原産の小型ザルには、その他にもヒトとよく似た特徴があります。目と目を合わすアイコンタクトをとり、父親も子育てを手伝い、皆で同じ行動を取りたがるなどです。また、食物を子と分け合うというサルでは非常に珍しい行動もとります。こうした特徴やサルの中では非常に多産であるという特徴などから、近年研究対象として非常に注目されてきています。

 マーモセットというサルを対象に、こうした特徴的な行動やその基になる脳の働きを明らかにしようと研究しています。また、社会性の高いマーモセットを使って、社会性に障害のある精神疾患や発達障がいのモデルを作り、その原因解明や治療法の開発などを目指しています。本セミナーでは、マーモセットの紹介と現在行なっている研究をご紹介します。












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