第6回京都大学附置研究所・センターシンポジウム
「京都からの提言-21世紀の日本を考える」
山本 博之 (京都大学地域研究統合情報センター 准教授)
ポスト・インド洋津波の時代におけるbosai(防災)
2004年12月に発生したインド洋津波(スマトラ沖地震・津波)は、震源に最も近いインドネシアをはじめとするインド洋沿岸の諸国で約22万人の犠牲者を出した。人類史上でも稀に見る規模の被害を出したこの津波を契機に、日本語起源の「tsunami」(ツナミ)という言葉が世界で使われるようになった。このことは、今日では災害への取り組みが世界規模の重要な課題となっているとともに、防災・災害対応の先進国である日本に対する世界の期待が大きいことを意味している。さまざまな災害を経験し、防災や災害対応の経験や技術を蓄積してきた日本が世界の期待に応えるためには、「tsunami」だけでなく、日本発の防災としての「bosai」(ボーサイ)も世界に発信する必要がある。ただし、国や地域によって社会のあり方は大きく異なるため、日本で築き上げられた防災の経験や技術をそのまま外国に持って行っても通用しない。「bosai」を広めるには、日本発の防災をもとに、世界の他の国々に通用する形に改造・修正する必要がある。その具体的な工夫について、東南アジアの災害大国であるインドネシアの例をもとに考えてみたい。